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パナソニックオープン大会レポート② [大会2日目]

2024年9月20日。兵庫県神戸市の有馬ロイヤルゴルフクラブで開催中のパナソニックオープンは大会2日目を迎えた。
最終ホールでバンカーから直接叩き込むバーディーを奪った平田憲聖と、勝俣凌が14アンダーで首位タイに並ぶ展開。1打差の13アンダー、3位タイには宋永漢と阿久津未来也が続いている。
コースと協力関係にある関西大学4年のアマチュア、真鍋和馬はこの日も3アンダーで回り、通算8アンダーの18位タイ、有馬ロイヤル所属の松本凌も5アンダーの49位タイで見事予選を通過した。

9月も下旬だというのに初日の気温は34度、2日目も33.5度と真夏日が続く今大会。
日本列島を襲い続ける異常気象との闘いを強いられているコース整備のスタッフが経験している苦労もまた相当なもの。
そこで本日のメインストーリーは、当コースのグリーンキーパー・吉田健太郎の仕事ぶりにスポットを当てる。

 

自然との闘い

日焼けした顔に白い歯が光る。現在の心境を吉田に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「夏のトーナメントなので、(コースメンテナンスが)厳しいのは分かっていたんですけれども、本当に自然との戦いだなと思いましたね。選手もこの暑さで18ホールどうやって体力を温存して戦っていくのかと考えていると思いますが、僕らメンテナンス側も、同じ戦いだなと、本当にひしひしと感じました」。

 自然との闘い。ひとことで言ってしまえば簡単だが、コース管理歴31年の吉田にとって、今回の戦いは容易ではなかった。10年前にできたことが、今はまったく通用しない。経験則が通用しなくなっているのだ。

「8月も結構大変でしたが、9月に雨も持って、そこから冷えるかなと思ったら夏に3回くらい逆戻りしたみたいな。9月には人間もしんどいですが、それはコースも同じなんです」。

これは辛い。9月19日の大会初日に向けて、自然との戦いはすでに半年前から始まっていた。

「3月に芝が動き出す(成長し始める)のでグリーンの更新作業を増やします。穴あけ(エアレーション)を増やすなどを、計画立ててやってきました」。

しかし、その計画通りにはいかないのが、ここのところの異常気象。グリーンへの対策は、試行錯誤しながら続いていく。

「細菌ですね。高濃度細菌とかいい菌を土壌に入れるとか、そういうのをずっと3日に4日に1回ぐらいですかね。普通1回ずつ2回とかしか入れないんですけど、そういうのをちょっとこまめに入れて対応しました」。

しかし夏に入ると、想像を超えた事態にも悩まされる。

「最高気温が36度とか、37度になる。それ以上に僕らが一番気にしてるのは、夜温(やおん)。夜の温度ですね。今夜中の3時にロイヤルで測っていたら27度もあるんですよ。去年は21度でしたが夜になっても下がらない」。

これもまた、芝には良くない。吉田が頭を悩ませる事態は、波状攻撃のように次から次へと襲ってきた。そのうえ、トーナメント直前には予想外のことが起こる。
18番のスタンドをグリーン近づけたところ、朝日が差し込まず、通気性も悪くなった。

「日も当たらない上に、10番から上がってくる冷たい風も遮られてしまった。グリーンにとっては最悪な状態が起きてしまった」。

トーナメントを開催してこそ、次々に出てくる課題。吉田はそれを修正しながら、トーナメントにこぎつけたわけだ。
トーナメントはまだ2日ある。予断を許さない状況ながら、ベストコンディションに近づけるための戦いは、最終日の最終組がホールアウトするまで、続けられる。

 

 

松本凌 2日目

インスタートの10番でバーディーが先行したものの一時は圏外にはじき出された松本が土壇場で踏ん張った。一時は絶体絶命のピンチに追い込まれたが「その瞬間に吹っ切れました」。

17、18、1番と3連続バーディーを奪うと、続く2番でボギーを叩きながらもすぐに3番でバウンスバック。大詰めの7、8番の連続バーディーで、予選通過圏内に飛び込んだ。

プロデビュー戦で、所属している有馬ロイヤルで大逆転の予選通過に「滑り込めて良かったです」と安どの笑顔浮かべた。
底力を見せつけた松本に、もはや失うものは何もない。
残り2日の猛チャージに期待が集まる。

 

 

真鍋和馬 2日目

アマチュアの真鍋が2日目も好調。1番でバーディーを奪う幸先のいいスタートを切ると、この日も5バーディー、2ボギーの69をマーク。27位タイで楽々と決勝ラウンドに進出した。
それでも本人は「アウトでちょっと伸ばし切れなかったんで」と不満顔。「最後の方はショットも荒れちゃって、3パットもあって、あまりいい内容ではなかった」と反省しきりだったが、予選通過という一つの目標をクリアしたのも事実。
「明日はもう、失うものはないんで、上を目指して頑張ります」と言い切った。

 

 

平田憲聖 2日目

今季の好調を維持している平田が、9番ではピンマイクをつけて、ギャラリーにラウンド中のコメントを届けるサービス。「あれが一番緊張した」とはいうものの「9番が終わった時に『結構聞いてたよ』とギャラリーの方にいってもらえて。
キャディさんとの会話や、打つ直前の会話は面白いと思うので、あれは今後も取り入れたい」と満足気。
18番ではグリーン右のバンカーから、25ヤードを直接叩き込むバーディーフィニッシュで、首位タイに並んだ。
「最終ホールでボギー打って、明日を迎えたくなかったので、最後ラッキーで入って、首位で終えられたのはプラスになると思います。明日から決勝ラウンドなので、また一から気持ち切り替えて頑張りたいと思います」ときっぱり言い切った。

 

 

永野竜太郎 2日目

永野竜太郎が2日目、216ヤードの14番でホールインワンを演じた。6Iから放たれたショットはピン手前2メートルに落ちてカップイン。
「220 ヤードくらいあったので、見えなかったですけど、寄ってくれるかなと思って、キャディバッグの方へ歩いていたら『入った!』と言われた。すごくいいショットでした」と冷静に振り返った。
むしろ興奮していたのは普段から仲が良く、この日は同組でのラウンドとなった宋。
「韓国ではホールインワンをした人より、その横で見ていた人の方が、運が良くなるというのが定説、もし私が勝ったら、竜太郎さんのおかげです」と笑わせた。
しかし初日、2日と首位を走っている宋だけに、冗談には聞こえない――。

 

取材▪構成=日本ゴルフジャーナリスト協会会長▪小川朗
写真▪小中村政一

 

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